【失敗談】情報漏洩!?海外のタクシーで忘れ物!

2023年8月17日木曜日

お父さんの思い出

t f B! P L
海外のタクシーにノートパソコン忘れて絶望


海外経験も、人生経験も乏しい若造の頃に味わった、悪夢のような失敗談をご紹介。


この記事でわかること

    香港のタクシーで

  • 置き忘れをしたらどうなる?
  • 置き忘れた物は返ってくるのか?
  • 置き忘れの代償・・・

楽しい?海外出張

むかしむかし。

まだ、スマホなんて近未来的な空想でしかなく、ピッチ(PHS)や、ガラケーが盛り上がり始めたばかりのころ。

そう、ざっと20年ほど前に遡る。

そんな時代に、とあるソフトウェア開発の海外案件を担当していたボク。

上司と他数名で、


香港


へ出張することとなった。

海外への出張は何かと大変なのだが。。

当時その業界は羽振りが良く、割高な出張費が支給されたり、顧客の所有する五つ星ホテルに泊まれたりと、まさに夢のような待遇に


ウハウハ🤤


いやいや、とても、やり甲斐があった。

土日には香港をフツーに観光することもでき、仕事以外にも、さまざま貴重な経験を得ることができた。

だが、何もかもが旨い話ばかりではなかった。

残念ながら、同行の上司に、難あり

その上司は一言で言うと、マシーンの様に冷徹なオッサン。気に入った人間としかまともに口をきかない。

これに苦しんだ部下は少なくないが、そんな問題のある上司であっても頼らざるをえなかったのは、その上司だけが英語に長けていたから。。

ちなみに、ボクや同僚の英語力は、カタコトで、日常会話も難しいレベルであった。

激務とモラハラの果てに

当たり前だが、出張期間内に目的の仕事を完遂しなければならない。

いつもより余計に経費をかけて、わざわざ現地に赴いて仕事をしているで、出張時はスケジュールの先延ばしが許されない。

そんな、ただでさえ緊張感のある状況で、問題の上司の言動にも精神的に追い詰められる日々。

例えば、上司に作業日報をメールすると

ひとこと


「全然だめ」


とだけ書かれた返信メールがくる。

何がダメなのか全く説明が無い。

何がダメなのか聞きに行くと、

そんなこともわからないのか?とばかりに、散々ダメ出しされる。

ほとんどが理不尽な要求だ。

挙句、社内の全体メールで「こいつら使えねぇ」とばかりに晒し上げられる。

最悪なのは、その状況で仕事終わりの夕食に同行せねばならないことだ。

できれば丁重にお断りしたいところだが、そんなことを言える空気ではなかった。

各地から出張してきた他社の方々と談笑しながら、夕食を楽しむ上司。
それを横目に、散々ダメ出しされた後のボクら部下たちは、肩身を狭くしながら飯を食べる。。

なんだろう、まるでボクらだけ違う空間にいるようだ。

日々、ボクらがこの上司に理不尽な仕打ちを受けている姿を見てか、他社の方々からは哀れに思われているようで、そこには微妙な空気が流れていた。。

1週間も経たないうちに、ボクらの心身の疲労は極限に達しようとしていた。

はじめてのおつかい

香港での日々の通勤には、タクシーを利用していた。

余談だが、当時、香港のタクシーにびっくりしたのは、運転がちょ〜乱暴なこと。

ひょっとすると、安全運転なタクシーもあったのかもしれないが、ボクが目の当たりにしたタクシーは皆、細い道だろうが、歩行者がすぐそばを歩いていようが、信じられないスピードでぶっ飛ばしてくるのだ。

「歩行者優先」などという概念は、微塵も感じられなかった。

乗っていても、身の危険を感じることがあったが、通勤にはタクシーを利用していた。

出勤時刻にホテルのエントランスで上司や同僚と合流してタクシーに乗り込み、上司が行き先をドライバーに伝えていた。
帰りも同様にタクシーであった。

当時の香港では、英語が通じないドライバーも多く、英語が堪能な上司も、会話というよりは、中国語の現地人向けの地図や筆談を利用して行き先を説明していたようだ。

そんなある日。

仕事で問題が発生してしまい、どうやら上司だけ残らなければならない状況となってしまった。

すると、上司はツラッと


「あ、先に帰ってて」


と、言い放った。


え゛!?

ボクらだけで帰るんですか!?

タクシーで?

英語喋れませんけど。。


突然の無茶振りに、ボクらは戸惑うしか無かった。

英語が通じないドライバーが多い、という意味では、英語力の有無はあまり関係無いのかもしれない。

しかし、そんな時にモノを言う「海外経験」的なものもほぼ無いため、もはや不安しかない。

が、この上司が、そんな部下の不安を酌んでくれるはずもなく、


「は? 一緒に残ってても無駄だから、
 先に帰ってて。」


冷たく突き放された。

というわけで、とうとうその日、英語力も海外経験も0に等しいボクと先輩のみで、タクシーでホテルへ戻ることになった。

言葉通じず、迷走タクシー

職場を出ると、いつものように、タクシーが列を作って停まっていた。

男気ある先輩が、地図を持って助手席に乗り、いつも上司がやっていたドライバーとのやり取りを買って出てくれた。

ボクは先輩の荷物を預かり、後部座席へ乗り込んだ。

先輩は地図を広げ、宿泊先のホテルの位置を指で指し示して、ここに行きたい!とカタコトの英語を交えて伝えた。

ドライバーは首を傾げながら、地図をよこせとばかりに奪い取り、なにやら確認している。

たまに中国語で何かを語りかけてきたが、何を言っているのかさっぱり解らなかった。

こちらも、片言の英語で応戦してみるが、微妙に伝わらない模様。
いきなり暗礁に乗り上げそうだった。

不安な面持ちでドライバーを見守っていると、しばらく地図と睨めっこした後、突然、

OK!

と言い、
ガコガコ!っとシフトチェンジしたかと思うと、荒っぽく車を発車させた。

先輩が運転手に見せた地図は、ホテルに常備されている日本人向けの地図だったせいか、理解するのに少し時間がかかったようだ。

何はともあれ、タクシーは走り出した。

無事にホテルに到着できることを信じ、不安な気持ちで注意深く窓の外を見ていた。

しばらく走っていると、なんだか様子がおかしい。

見たことの無い景色が広がり始めた。


あれ?
こ、こんな道、
通ってましたっけ?


恐る恐る先輩に聞いてみると、先輩も同じ疑惑を抱いていたようだ。

違うよな?この道。

しばらく様子をみていたが、やはりおかしいので、慌ててドライバーに

道を間違えてないか!?

と、2人がかりで必死に伝えてみた。

ドライバーは、2人の乗客が突然、よくわからないカタコトの英語で騒ぎ始めたので、

ア!?ナンダ!ドシタ!?

的なリアクションを取り、困惑していたが、なぜか車を止めようとはしなかった。

いっぺんに色々言っても埒が明かないことに気づき、まずは止まってもらうことだけを伝えるようにした。

ストップ!

プリーズ、ストップ!

ようやく、車を停めて欲しいことが伝わり、停車してくれた。

停車したのはいいが、もはや


ココは一体ドコですか?


停車するまでに、相当長い距離を走られてしまった。


オイ!
ナンダ?
ドウシタ!?


車を停車したドライバーは困惑しながら、おそらくそのようなことをボクらに叫んでいた。

気を取り直して、

道を間違えていないか?

目的地は、ココだ!

と、カタコトの英語と、身振り手振りを交えて、再度地図を渡して確認した。


再び地図を受け取ったドライバーは、行き先を勘違いしていたことに気づいてくれたようだ。

 OK!OK!

再確認の後、今度こそ理解したような反応を見せ、来た道を戻り始めた。

こうして、通常の何倍もの時間と距離を稼がれて、なんとかホテルへ辿り着いた。

見慣れた景色が見えてきたときの安堵感といったら、筆舌に尽くし難い。

これまでの人生において、これほどの不安と安堵を味わったことは無い。

ただでさえ仕事でヤラレているところへ、このアクシデントだ。精神的なダメージは相当なものだった。

また、無駄な距離を走られた分、タクシー代も余計にかかった。

まさに、踏んだり蹴ったりである。

タクシーは宿泊中のホテルの玄関前に停車した。

とにかくもう息苦しくて、同僚が料金を払っている間に降車し、外の新鮮な空気を吸った。
( ̄O ̄;スー、ハー

生きて還った気がした。

支払い後、先輩も降りてきた。

「いやぁ~、まいったな。」と、2人でため息をついた。

また、上司の理不尽な仕打ちで酷い目にあったと2人で毒づいた。

そんな中、先輩があることに気づいてボクに質問をしてきた。


「あれ?カバンは?」


カバン?

ボクは背中に背負ったカバンを見せながら、

「あ、こちらに」

と答えた。
すると、すかさず先輩が

「いや、オレの!」



・・・。
お れ の?




あ゛ーーーーーーー!



一瞬にして全身から血の気が引いていくのを覚えた。

先輩のカバンを、後部座席の足元に置いたまま降りてきてしまった。



顔面蒼白



急いでタクシーを呼び止めねば!!

先ほど乗ってきたタクシーに目をやると、まさにウインカーを出してホテルから出ていくところだった。

全力で走り叫んだ。

ウェーーーーーーーーーーーィト!

無情にも、暴走タクシーはホテルを出てしまった。

もはや追いつけない。

途方に暮れ、恐ろしい脱力感に襲われた。


「おい〜!どうすんのよー!」


先輩の悲鳴にも似た叱責に、ただただ平謝りするしかなかった。。


タクシー無線に賭ける

とりあえず、立ち尽くしていても始まらないので、まずは上司の携帯に電話してみた。

が、全然繋がらない。

肝心な時に繋がらない。

仕方が無いので、ホテルのロビーへ行き、タクシーにカバンを忘れてしまったことを告げ、助けを求めた。

片言の英語と、悲痛な表情を伴うボディーランゲージだったので、ボクらの姿は、悲しいまでに滑稽だったことだろう。。。

運悪く、日本語のできる従業員がその日はおらず、説明にかなり苦戦した。

苦戦の末、なんとかこちらの想いは伝わり、全タクシー無線に、忘れ物を届けるようアナウンスしてもらえることになった。

すると、こんなことを訊かれた。


「謝礼はいくら払えるか?」


え!?謝礼!?

日本だと、落し物は黙っていても交番に届いたりすることもあるが、香港ではそんなわけにはいかないようだ。

届けてもらった際に、お礼としてお金をどれだけ支払えるかによって、戻ってくる可能性が高まるらしい。。

理屈はわかるが、そんなに大金を持っているわけもなく・・・。

先輩と相談し、日本円で2、3万円程度だと伝えたところ、苦い顔をされた。
その程度では、反応は無いかもしれないとのこと。。

何はともあれ2、3万円の謝礼でタクシー無線にアナウンスを流してもらった。
あとは、先方からの連絡待ちとなった。

その後、上司ともようやく連絡が繋がり、ひとまず状況を報告。

冷徹なのか冷静なのか、「はぁ。そうですか。んじゃ明日。」とため息混じりの素っ気ない反応。


ック!


部屋に戻り、先輩と2人、しばらくの沈黙。


「オレら、オワッタな」


いろいろ考えた末に、沈黙を破って先輩がポツポツ語り始めた。

「始末書どころじゃないな、
 確実にクビだな。社会人失格だな。」


最悪の事態を想定して、予め自分に言い聞かせることで、これから現実に降り掛かるダメージを軽減させようとする、本能的な言動であろう。


ほんとスミマセン。。


先輩は優しいので「オレら」と言ってくれたが、実際のところヤラカしたのはボク一人。

その一言一言が、胸をエグる・・・。

タクシーに忘れた先輩の荷物が、財布や着替え程度のものなら、ここまで深刻にはならなかった。

事態が深刻な理由は一つ。

そこにノートパソコンが入っていたから。
ノートパソコンには、社外秘の業務情報が詰まっていた。

それを紛失したということは、致命的な情報漏洩に繋がりかねない、セキュリティインシデントなのである。

もうほんとに、生きた心地がしなかった。

身体の中心に重くドス黒いものが渦巻いている
これが絶望という感覚なのか。。

タクシー無線に一縷の望みを託して、眠れない夜が更けていく。


頼む!ノートパソコンよ、
戻ってきてくれ〜!!

藁にもすがる想いとはこのことだろう。

紛失の代償

無情にも、朝がやってきた。
ボクらの祈りも虚しく、とうとうタクシー無線の応答は無かった。

上司にも改めて報告。

即座に、全社メールで「こいつらヤラカした」と晒上げられ、業務情報が入ったノートパソコンを紛失してしまった事実が報告された。

当然、会社では結構な大事に発展。

可哀想なのは先輩だった。

自分が紛失したわけでもないのに、先輩のパソコンだったということで、


「○○○君のパソコン紛失」


などと、

あたかも先輩が紛失したかのようなタイトルで報告されたり、カバンの中身も先輩にしかわからないので、地元警察への届出を出しに行かされたり、本当に大変そうだった。

真犯人のボクはというと、心を痛めることしかできなかった。。

そんなクビも覚悟した絶対絶命のボクらだったが、幸い、寛大な措置により、クビになることは無かった。

そしてまた、紛失したノートパソコンからの情報漏洩による被害も出なかったようだ。

ノートパソコン自体を暗号化していたことも大きかったと思うが、当時は現在ほど、情報漏洩が問題視されていない時代だったので、この程度で済んだのではないかと思われる。

ちょうどこの少し後くらいから、企業の情報漏洩に対する考え方が変わり始め、ルールやペナルティが厳格化していった。

もし「今」同じことをヤラカしたらと思うと、ゾッとする。

手荷物は肌身離さず持つように気をつけたい。

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プロフィール

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40代、二児の父親です。 北国育ちで在住。寒いけど冬が美しいので北国が好きです。 思い出や、日常に思ったことを書き留め、それが誰かの何かの足しになったら、こんなボクの人生にも意味があったというもの。 「クスッ」としてもらえたら幸いです。

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